丸高前の通りが場面。 学校に向かって歩く生徒が映る。 歩く人、自転車の乗っている人、さまざまである。 生徒達は皆、パオパオと楽しげに会話している。 (が、ここではそのパオパオという声は、ビデオには分からない程度にしか聞こえない。) そこでぞうFがだるそうに歩いてくるのが映る。 | ぞうF | あ〜あ・・・。明後日から中間テストかぁ・・・。 国語の先生おっかないからちゃんと勉強せんといかん・・・(半ベソ) |
うしろからぞうGが走ってくる。 | |
ぞうG | パーオ(おーい)、パオパオパオ(早く行かんと)パオパオパオパオ!!(遅刻するよ!!) |
ぞうGが少し遠ざかったところでぞうF、はっとして、 | |
ぞうF | あー、待ってー!! |
ぞうFも校門に向かって走り出す。 カメラは吸い込まれるように校門に入っていく生徒達を遠くから映す。 澄み切った青空に今回の題『パオパオ』が出る。 キーンコーンカーンコーン 先生があわてて教室にかけこむ。 入り口のところには「ぞう組」と書かれてある。 | |
ぞうA | パオー。(起立ー。)パオ。(礼) |
全員 | パオパオパオーパオ。(おはようございます。) |
先生 | パオパオ。(おはよう)パオパオーパオパオパオ。(みんな聞いてくれ) パオパオー、(突然のことだからー、みんな驚くと思うけど)、 パオパオーパオパオー(先生今日から) パオパオパオパオパオパオン。(国語の先生から数学の先生になった。)(さらりと言う) |
全員 | パオー!?(えー!?)(大げさに(尻上がり)) |
ぞうB | パオーパオパオー。(本当に突然だぁ。) |
先生 | パーオ、(なぁーに)パオパオパオパオパオ(教科書と授業内容が) パオパオパオパオパ。(ちょっと変わるだけじゃないか。) |
クラスが少しパオパオとざわつく。 | |
ぞうC | パー、(じゃー)パオパオパ パオパオパ、(僕たちの国語の勉強は) パオパオパオパオパオ!?(どーなってしまうんだ!?) |
ぞうG | パーオ。(そうよ)パオパオパオパオパオ(テスト範囲まで) パオパオパオパオ!!(まだ授業やってないのよ!!) |
ぞうD | パーオパーオ!!(そーよそーよ!!) パッパオパオパオパオ!!(勝手なこと言わないで欲しいわ!!) |
ぞうE | パーパオパオパオパオパオパオパオ、(今日漢字の小テストするって言ってたから) パオパオパオ。(勉強してきたのに。)パオパオパ〜(嫌なカンジィ〜) |
先生 | パオパーーーーオ!!!(だまれぇーい!!!) |
全員黙る。 | |
先生 | パオパオパオパオ、パパオパオ(なかなか今のギャグ、面白かったゾ) |
全員パオパオ笑う。 | |
先生 | パオ、パオパオパオパオパオー!(はい、数学の教科書25ページあけろー!) |
全員国語の教科書をしまい数学の教科書を取り出してひらく。 その間もパオパオという私語がきこえる。 先生は黒板に問題番号を書く。 | |
先生 | パオパ(今日は)、パオパオパオ(中間テスト前なので)、 パオパオパオパオパオ。(問題をいっぱい解いてもらいます。) パオパオ〜(いいですか〜)パオパオパオパオパオパオパオ。(弁当なんか食べないように) |
先生、教科書で隠して弁当を食べようとしていた生徒の教科書をとる。 その生徒、照れながら弁当を片付ける。 みんなパオパオ笑う。 | |
先生 | パオーパオパオパオパオ、(じゃー前に書いた番号の問題を) パオ〜・・・(じゃー)パオ、パオパオパオ。(田尾、前に出てやりなさい) |
ぞうA | パオ。(はい。) |
先生 | パオパオパオパオー。(みんなも解くんだゾー。) |
ぞうA、前に出て問題を解き始める。 その間、先生はうろうろ歩いて悪い生徒を注意する。 *悪い生徒の例 ・姿勢が悪い ・しゃべってる ・ヨーグルト食ってる奴 そのうち、居眠りをするぞうFを発見。 | |
ぞうA | パオパオパオパオパー。(先生できましたー。) |
ぞうA、席にかえる。 先生黒板に戻って黒板を見て、花丸をしながら | |
先生 | パオパオパオパオ〜。(全問正解で〜す。) |
生徒たち、拍手。 ぞうA、照れる。 | |
先生 | パオ〜(じゃー)、パオパオパオパオパオ。(次も誰かにやってもらおう。) |
先生、ぞうFをじっと見る。 そしてゆっくり近づく。 | |
先生 | パオーーーーー!!!(こらーーーー!!!) |
ぞうF、びっくりして目を覚ます。 | |
先生 | パオパオパオパオ、パオパオパオパオパオ!!! (授業中に堂々と居眠りするんじゃない!!!) |
ぞうF | あは、すいません |
全員 | パオ?(え?) |
間。 | |
先生 | ・・・・・・パオ、パオパオパオパオパオパオ。(長谷川、25ページの問18をやりなさい。) |
ぞうF | え!?問18!?あれ、国語じゃなかったっけ。え!?数学? 数学・・・・あ、教科書忘れたかな。 なぁ、ちょっと見せてくれんの?・・・・ありがと。 |
ぞうF、唖然とする横の生徒から教科書を奪う。 ぞうFの独り言にもクラスがパオパオ騒ぎ出す。 | |
先生 | パオパオパーーーオ!!!(だまれぇーーーい!!!) |
全員だまる。そこでチャイムが鳴る。キーンコーン・・・ | |
先生 | ・・・・・・・パオパオパオパオ(次の時間も数学だから)、 パオ、パオパオパオ(長谷川、ちゃんと書いときなさいよ。) |
ぞうF | はい。 |
また間。 全員ぞうFの顔を、目を見開いてみてる。 | |
ぞうA | パオー(起立ー)パオ。(礼) |
先生、教室を出る。 ぞうF以外、ひそひそ、いやパオパオとしゃべる。 | |
ぞうF | なー、問18のカッコ4の解き方、わかるぅ〜? |
話しかけられた生徒、逃げ出す。 | |
ぞうF | なー、ここなんやけどー・・・・ |
話しかけられた生徒、逃げ出す。 みんな逃げて、とうとう一人に。 | |
ぞうF | ・・・・あれ?次体育やっけ? |
場面暗くなる。 場面は石庭。 先生、高いところに立ち、恥ずかしいぐらいさけぶ。 | |
先生 | パオパオパオーーーー!!!(字幕なし) |
場面暗くなる。 そして場面は教室へ。 中間テストの問題用紙を先生が配っている。 | |
ぞうB | パオー、パオパオパオパオー。(先生ー、一枚たりませーん) |
先生 | パオパオ。(はいはい。)・・・・パオパオー、(いいですかー) パオパオパオパオパオ。(厳正な態度で臨んで下さい。) |
ぞうF | 先生ー!! |
全員、ギロッとぞうFをにらむ。 | |
ぞうF | ・・・あの、一枚足りません。 |
先生 | (ぼそっと。紙を渡しながら)パオパオパオ。(静かにしろ。) |
ぞうF | 静かにしろって・・・・紙がないんだから仕方ないじゃないですかぁ〜 |
ぞうC | (バンと机をたたいて) パオパオ、パオパオパオパオ!!!(お前、一体何語でしゃべってんだよ!!!) |
ぞうA | パオパオパオパオ〜(聞いたこともない言葉なのよねー。) |
ぞうF | へ!?うちは日本語を・・・ |
ぞうD | パオパオパオ、パオパオパオ!!(テスト中なんだから静かにしてよ!!) |
先生 | パオパオパオー。(はい静かにー。) パオ、(長谷川)、パオパオパオパオパオ。(ちゃんとパオパオ語で話しなさい) |
ぞうF | パオパオ語!? |
ぞうG | パオパオパオパオパ!!(いい加減まじめにやってよね!!) |
ぞうE | パオパオパオ。(ふざけすぎよ) |
ぞうF | いや、ふざけてるわけじゃ・・・わかりました。何がおかしいんかな。 ここんとこ寝不足でちょっとしゃべり方が弱々しかったんかな。 ちょっと髪なんかをかき上げてかっこよく話したらええんかな・・・ |
ぞうFが独り言を言ってる中、またクラスがざわつく。 | |
先生 | パオパーーーオ!!(だまれぇーーーい!!) パオ、パオパオ、パオパオパオ。(長谷川、もういいからテストをやりなさい。) |
ぞうF | (髪をかき上げながらかっこよく)わかりました |
ぞうB | (机をたたいて、テストをくしゃくしゃにするのもOK) パーオパオパオ!!(もーがまんできない!!) |
クラス全員、ぞうFをにらむ。 ぞうF、ビビル。 | |
ぞうB | (ぞうFに近づいて) パオパオパオパオ、「パ」「オ」!!(ちゃんと「パ」と「オ」を使ってしゃべりなさい!!) |
ぞうF | ええ!?でもみんな日本語しゃべってるじゃん。私はみんなの言葉、理解できるもん!! |
ぞうD | パオパオ?(日本語?) |
先生 | パオ、パオパオパオパオ!?(お前、こいつの言葉がわかるのか!?) |
ぞうD | (ぞうFに近づく。)パオ、パオパオ。(はい、ほんの少しだけ。) パオパオ(長谷川さん)、パオパオ、パオパオパオパオパオパオ。 (ここはパオパオ語をしゃべっといた方がいいわよ。) (言い終えたら席にもどる) |
ぞうF | ええ!? |
ぞうA | パオパオパオパオパオ!!!(とにかく怒る) |
ぞうF | そんなに怒っても・・・ |
ぞうE | パオパオパオパオパオ〜〜(泣きくずれる) |
ぞうF | なんで泣き出すの〜〜!! |
F以外のクラス全員、パオパオ泣く。 | |
ぞうF | も〜〜どーなってんの? ・・・・でも、とにかく「パ」と「オ」を使ってしゃべったら何とかなるって言ってたよね。 よーし。 (無意味におどおどと。)・・・・パオ〜〜〜 |
全員 | (はっと泣きやんで)・・・・・パオ? |
ぞうF | パオパオ。 |
全員 | パオパオ。 |
ぞうF | パオパオ? |
全員 | パオパオ? |
ぞうF | パオパオパオーーー!! |
全員 | パオパオパオーーーー!! |
みんなテストもほったらかしてパオパオしゃべる。もちろんぞうFも。 しかし、Fは実のところ意味もわからずパオパオしゃべってる。 カメラアングルが教室から遠ざかって暗くなる。 そして闇の中にタモリっぽい人登場。 | |
タモリ | こうして彼女はパオパオ色に染まっていきました。 周りに流されるままに。 しかし――、 パオパオという言葉を発することで、彼女の心は、本当に満たされているのでしょうか? |
タモリ似の人、うしろを振り返る。 そこは街中。 ぞうF、なんだかうれしそうに歩いてくる。 前から男女のカップルが歩いてくる。 | |
ぞうF | パ!パオ!!(おいっす!!) |
カップル、びっくりして逃げ出す。 「世にも奇妙な物語」のテーマが流れる。 ぞうF固まったままである。 タモリ似、それを見てニヤッと笑って街中へ消えてゆく。 終
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