あやしい風鈴一家(特別篇)
脚本 白井辰憲

登場人物    三津亞美・・・学校のカウンセラー
          風鈴 響・・・女子中学生。特殊能力有り。
          風鈴火山・・・響の父。クリーニング店を経営している。
          風鈴ジュリエット・・・響の母親
          日直・・・脇役の極み


第1部  カウンセラー室にて
第2部  風鈴家にて
第3部  風鈴家にて

第1部  カウンセラー室にて

      学校のチャイムが鳴る。放課後の合図だ。校庭の方からは下校
       する生徒達の声が聞こえてくる。カウンセラー室では三津が一人
       机に向かっている。


三津   (書き物を止めて)ふぁ〜、疲れたー!今日はこれで終わりっと。(椅子
      から立ち上がり、帰宅の準備をする)しかし最近、誰も来なくなったわね
      ぇ。それだけ世の中は平和って事かしら。なんかこれでお給料貰ってち
      ゃ悪い気もするけど・・・まぁいいわ。貰えるものは貰っとかないとね〜

      その時、ひとりの女子生徒がおどおどしながら部屋のドアを開く


響     あ、あのう・・・

三津    ん!?あ、どうぞ入ってくださーい

響     は、はい(緊張のあまり同側の手足を同時にだして歩く)

三津    ・・・そ、そんなに緊張しなくてもいいわよ。もっと楽にしてちょうだい。
       さ、そこの椅子に座って!

響     あ、はい、失礼します

三津    ではとりあえず・・・お名前は?

響     えーと、風鈴響といいます

三津    響ちゃんか、いい名前ね!で、今日はどういう相談っていうか話って
       いうか・・・

響     はい、あのですね、実は私・・・クラスでいじめられてるんです!

三津    いじめ・・・そう。何か原因みたいなのってわかる?

響     ええ、それはそれははっきりとした原因があります

三津    よかったら教えてくれない?

響     いいですけど・・・ちょっと大きい声じゃ・・・

三津    あ、そうよね!(耳をかす)・・・・・・・・・・・・エスパー!!?(固まる)

響     ・・・・・・・・・あ、あのう・・・・・

三津    ハ!ご、ごめんなさい、つい。で・・・そのエスパーって具体的に何な
       のかなあ?私全然知らなくて・・・・

響     ・・・お見せしましょう

      響立ち上がり全神経を指先に集中する。


響     いきますよ!フンッ、ンンンンンンン〜・・・ファイヤー!!!

      遙か遠くで焼き芋屋の声が聞こえる。


響     ・・・ふう

三津    ふうって、ま、まさか今ので終わり!?

響     そうです。名付けて、バーニングポテト2000

三津    バーニングポテト・・・って芋焼いただけじゃん!しかも今頃2000!

響     私の力について詳しい事はいえませんが・・・私はこの力で、この力
       のせいでいじめられてきたんです!こんな力、無かったらよかったの
       に・・・(泣く)

三津    響ちゃん・・・

日直    (何気なく登場)そろそろ学校しめたいんですけど・・・・

三津    あ、はーい。わかりました。(日直、何気なく退場)でも、このままには
       しておけないわ。響ちゃん、今からあなたのお家行ってもいいかしら?
       もっと話とか聞いてあげたいんだけど

響      ・・・うぇ!!あ、ありがとうございますう!ハウッ(泣く)

三津    あー、もう泣かないで。(ハンカチを渡す)はい、かみなさい?

響      パク

三津    ちがうわよ!鼻よ鼻!

響      あ、そうですよねっ!すいません・・・ブビュフーー!!あ、これ洗って
       返しますね

三津    あ、いいのよ気使わなくて・・・

響      え、じゃあ・・・(返す)

三津    返すのかよ!!あ、いや、いいのよ〜別に(ハンカチをゴミ箱に)さ、行
       きましょう!

響     ちょ、ちょっと待って下さい!

三津    どうしたの!?

響     言ってみただけです。さ、行きましょう。(退場)

三津    ・・・・・・・・・・・・・・ほんとに悩んでるのかしら・・・(退場)


* 第1部終了 *



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第2部  風鈴家にて

            響と三津、風鈴家の玄関前に立っている。

響     着きました。ここです

三津    本当なのね?その台詞これで28回目よ!

響     大丈夫です。ほら、あれみて下さい

三津    風鈴クリーニング店・・・どうやら本当のようね

響     まあ立ち話もなんですので、どうぞ中へ!

三津    え、あ、うん。

      ふたり中に入る。カウンターで火山が雑務をせっせとこなしている。


火山    ヘイらっしゃい!!!

三津    ら、らっしゃい?ここクリーニング店じゃ・・・

響     ただいま父ちゃん!

火山    おお、響か。おかえり。その若い連れの方は誰でぇ??

響     エサよ

三津    何のよ!?

響     ブタゴリラ

三津    人じゃん!

火山    まあまあ、そうかっかしなさんな。とにかく奥でお茶でも・・・・

響     そうよ先生、奥行って話しましょ?先生の好きなごっくん馬路村だって
       あるし

三津    なんで知ってんのよ!?・・・まぁいいわ。それじゃあお言葉に甘えて

火山    おい響、母ちゃん二階にいるからお前呼んでこい!

響      ん、あ、わかった(退場)

火山    ささ、狭い所ですがゆっくりしてって下せぇ、らっしゃい!

三津    どっかで聞いたような・・・まぁいいわ。あ、そうそう、丁度いい機会な
       ので少し相談してもかまいません?

火山    俺はいいけど・・・ジョニーがねぇ・・・

三津    ジョニー?

火山    ペットの五右衛門です!

三津    意味わからん!

火山    シュン・・・

三津    いじけないで下さい!

火山    シュワッチ!!

三津    飛ぶなーー!!

火山    じゃあ、どうしろと?

三津    普通でいいでしょ?

火山    それは・・・・できん!!

三津    え!?

火山    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・トトロに会いたい

三津    あなたは少年ですか!・・・はあ、それにしても響ちゃん遅いですね

ジュ    すいません遅くなっちゃって。鼻から湯気が出ちゃって・・・・

三津    お前誰だ!

ジュ    え?響の母だすけど?

三津    いや、なんで般若の面なんか被ってるんですか?

ジュ    あ、これは自分の名にちなんで・・・

三津    般若っていうんですか?

ジュ    ジュリエットです

三津    関係ねえ!

火山    シュン

三津    もうええわ!ったく・・・。じゃあ話始めますよ?実は・・・今日の放課後
       響ちゃんからご相談を受けたんですけど、彼女、自分の持つエスパー
       の力のせいでクラスでいじめられてるそうでして・・・

ジュ     ハウア!(泣く)

火山    おお、ジュリエット!先生、すまんがその話はまた後日ということで・・・

三津    あ、そうですね・・・。急にこのような話をして、どうもすいません

火山    そんな、先生が悪いんじゃありません

ジュ     そうです、気づいてやれなかった私達がいけないんです。親失格です

火山    おい、みっともねぇから顔洗ってこいよ

ジュ @  そうね、そうするわ。では失礼します(退場)

火山    あ、俺も便所・・・(退場)

響      じゃ、私はお風呂・・・(退場)

三津    え、ちょっ、あの、私は〜?ん?(足下のノートに気づく)
       な、何よこれぇ!響エスパー化計画!!?

* 第2部終了 *



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第3部  風鈴家にて

三津   響エスパー化計画!!?

      奥から何か落ちる音がする。なんと風呂場に行ったはずの響が
      立ち聞きしていたのだ。


響    どういう事?ねぇ先生、それってどういう事なの?私の力って・・・
      無理矢理造られたってこと?そうでしょ?そうなんでしょ!?

三津   響ちゃん、落ち着いて!

響    どうりでおかしいと思ったのよ。だってそれまで普通の女の子だった
      のが、小5の春に突然エスパーになったんだもん。・・・ちょっとお父
      ちゃんはどこ?お父ちゃん?お母ちゃん?どこ?!

火山   (ジュと共にタンスから出現)響・・・

三津   なぜそこから!?

響     お父ちゃん・・・(三津からノートを取って)これ、どういう事?

火山    ・・・・。ついにこの時が来てしまったか・・・。あれはまだ父ちゃんが
       独身だった頃だ。父ちゃんはその頃流行ってたエスパー魔美に憧
       れて、毎日修行をつんでたよ。魔美みたいなエスパーに・・・いや
、        寧ろ魔美になりたいという一心でな。それから2年程月日は流れ
       父ちゃんはある重大なミスに気がついた。父ちゃんは魔美にはなれ
       ない。なぜざら俺は・・・俺は・・・男だから!

三津    気づくんおそっ!

響      それで私をエスパーにした、ってわけね。お父ちゃん、そんな事して
       私が嬉しいと思う?私はみんなみたいに普通の女の子がよかったの
       よ!超能力なんてほしくないし、第一エスパー魔美って誰やねん!?

火山    響、すまん!父ちゃんも何か違うとは感じていたんだ。でもあの頃の
       俺は強くなかった・・・。謝ってすむもんじゃねえとは思うが、本当すま
       ん!このとおりだーー!

ジュ     あなた・・・。そうだわ、あなた、元に戻る方法はないの?

火山    あ、いや、あるにはあるんだが・・・・そいつはちょっと危険だぜ?

響      き、危険でも何でもいい!どうやるか教えて、お父ちゃん!

火山    ・・・・・わかった。まず血の繋がりの無い女性と手を繋ぐ。そして
       こう唱えるんだ。ラリパスラリパスルルルルル〜!と。

響      それで・・・終わり?

火山    それで終わりじゃ

響      わかったわ。それで元の普通の女の子に戻れるのね!じゃ、先生、
         お願いできますか?

三津    もちろんよ

火山    まままま待て!!ただしこの方法を使うと・・・手を握られた女性が
       エスパーになる・・・

三&響   えぇ!!

      響と三津、見つめ合う。火山うなだれる。ジュリエット口を開けている


響     ・・・・・・だ、だめ!そんなの出来ない!できるわけないよ!

三津    響ちゃん・・・私ならいいのよ?

響     えっ・・・?

三津    私はそれでいいのよ。結果私がどうなろうと、響ちゃんの悩みが
       晴れるのなら私は何でも喜んで引き受ける。

響     先生、何言ってるの?私が助かっても、今度は先生がいじめられ
       ちゃうんだよ?それでもいいの?

三津    それでもいいわ

響      なんで・・・なんでそこまでしてくれるの?

三津     だって私は・・・・・・カウンセラーですから!

響      先生ー!!!

三津    ああ、もう泣かないでって言ったでしょ?ふふ・・・。さ、始めましょ。

響      本当にいいの?

三津     (頷く)

響      先生、ありがと!ラリパスラリパスルルルルルルー。・・・・・あ、元
       に戻ってる!!本当に戻った!・・・先生、大丈夫?

三津     ・・・・・なんとも・・・・ないわ・・・?

火山     ウガー!

ジュ     あなた!?

火山     ち、力がみなぎるー!・・・俺がエスパーになった。

三津     何でよ!!?

ジュ      まあまあ、これってハッピーエンドゥ?

火山     お、そう言われてみりゃあ・・・!

響      うん!

三&響    ハッピーエンド。

        ジュリエット、悦に入る。
      
ジュ     THE  END・・・・

* 全部終了 *


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